夢を目標に変えるブランディングパートナーAIDDESIGN

Client Interview

内にあるものを引き出してくれたブランド戦略ワーク。
商品のブランド構築を通じて、組織の合意形成にもつながりました。

落合 彩矢さま
おいけのまど
代表役員

落合 彩矢さま

Introduction

猫の駅長で一躍有名になったローカル線、和歌山電鐵貴志川線の一駅、大池遊園駅。

ホームの階段を降りるとすぐ目の前に現れる小さな建屋で、土日のみオープンする直売所。
窓の向こうに田園風景越しの大池が広がるどこか懐かしい雰囲気の店先には、丹精込めて育てた農産物や加工品、雑貨などが並びます。

運営するのは会社でも個人でもなく、想いを共有する有志の任意団体。
有志だからこその自由さが何よりの持ち味です。

そんな任意団体“おいけのまど”のさらなる可能性を広げるため、エイドデザインがブランド戦略のお手伝いをさせていただきました。

(インタビュアー)フリーライター 橋本 真美/(写真)PHOTOGRAPHER 原田 佳美

落合 彩矢さまインタビューイメージ 落合 彩矢さまインタビューイメージ

それぞれが主体性をもつ次世代型組織

Contents01

(聴き手)皆さん肩書きがおもしろいですね。それぞれ本業は違うことをされていらっしゃると伺ったのですが。

(落合)おもしろいでしょう?林さんが「農 生産隊長」、樫尾さんは「人と木と自然をつなぐウッドワーカー」。他にも「次世代につなぐ地域魅力伝承デザインディレクター」とか「ウピウピ星人マネージャー 国際担当」「チェレンジウィズネイチャー支援リーダー」なんて肩書きの人もいるんですよ。
構成メンバーは7人ですが、私はファイナンシャルプランナー、林さんは果樹農家、樫尾さんはインテリア雑貨や家具を作るのが本業。他のメンバーも外資系コンサルの会社員やグラフィックデザイナー、キャリアカウンセラー、保育士と本業はさまざまです。

(聴き手)接点のなさそうな職種ですが、どういうきっかけで集まったんでしょうか。個人的にはウピウピ星人も気になるところです。

(樫尾)みんな商工会主催のインバウンド向け商品セミナーで出会ったメンバーなんです。そこで意気投合して一緒になにかしたいねとなって始めたのがこの「おいけのまど」。ちなみにウピウピ星人はそのうちの1人が作ったおいけファームの公式マスコットなんです。ここでグッズも販売してるんですよ。

(聴き手)おお、ゆるかわいいキャラクターですね! 皆さんはこちらの直売所の運営以外にはどういったことをしているんですか?

(落合)私たちの目的は耕作放棄地を再生させて、農業振興につなげることや、紀の川市の関係人口を増やすこと。耕作放棄地を利用した「おいけファーム」で農作物を作って、体験プログラムを作ったり、この直売所とネットショップで販売したり、「おいけラボ」で加工品や木工品を作っています。会社組織ではないので、メンバーそれぞれが主体性を持って動く「ティール組織」の形態で、各々がやりたいことを発案するという感じでしょうか。その拠点がこの場所になっています。

(聴き手)次世代の組織形態ですね。それぞれに意思決定があるということでしょうか。

(落合)ワンマンで進むのではなく、同意の中で進めていくイメージですね。その方が、ゆっくりだけど長く続けられると思うんです。個人の成長と組織の成長がイコールになればいいなと思っています。

(聴き手)この場所ものどかで素敵ですね!窓の外の景色が絵のようです。

(樫尾)その窓の景色から「おいけのまど」と名付けたんです。もとは使っていない林さんのコンテナ倉庫だったんですが、ここなら駅も近くて観光客にも来てもらいやすいし、体験ツアーの拠点になる。個人的にも見晴らしや風が心地よくて気に入っています。

(林)ここなら貴志川線を利用してもらえるんじゃないかというのもありました。自分たちが学生時代にお世話になって、親世代が頑張って残してくれた貴志川線には思い入れがあるので、存続して欲しいですね。

(聴き手)皆さん、紀の川市のご出身ですか?

(林)いえ、私たちはそうですが、他のメンバーは和歌山市や岩出市ですね。でもほぼ全員がIターンかUターンという共通点があります。だからこそ、いろんな視点で和歌山を見ることができている。でも全員性格や個性が違うので、飲み会をすると毎回オーダーがバラバラです(笑)

(聴き手)楽しそうなメンバー揃いな印象ですね。そういう自由な動き方と視点が組み合わさって成り立っている組織なんですね。

(落合)そうですね。ただ、みんなここが専業ではないので、内容によって温度差や責任の度合いも違ってきます。そのズレを見直して、もう一度道筋を見つけたいなと思ったのが、エイドデザインさんにお願いしたブランド戦略サポートに繋がっています。

落合 彩矢さまインタビューイメージ 落合 彩矢さまインタビューイメージ

必要なのはいずれのブランディングか

Contents02

(聴き手)エイドデザインには具体的にどういった依頼をされたんでしょうか?

(落合)最初はクラウドファンディングの相談をしていたんです。当時、渡部さんは行政のクラウドファンディング・アドバイザーもされていたので。
組織を作った時はインバウンド向けの農業体験を提供していきたかったんですけど、コロナ禍で難しくなってしまいました。国内向けにしても体験型のイベントはほとんどできなくなってしまって。

(聴き手)確かに今なかなか人を集めるイベントは難しいですよね。農業体験となると現場に来てもらえないと難しいですし。

(落合)すぐにオンラインクッキングなど、オンライン型のイベントに切り替えました。それに関しては、みんな副業でそれぞれの場所にいることからzoomをよく使っていたので早かったですね。ゆくゆくネットを使ったことをしたいなという構想はあったので、それが加速した感じでしたね。

(聴き手)その新たな一手としてエイドデザインへブランド戦略サポートを依頼されたということでしょうか?

(林)直売所運営がメインではなかなか収益が上がらない。どうするかとなった時にいろんな意見が出たんですけど、いまいち押しの一手がない状態。渡部さんにご相談した際も、「いま必要なのはブランドの構築では」という提案に腹落ちしたものの、それが組織ブランドなのか、商品ブランドなのか正直迷っていた状態でした。

(聴き手)最終的にはどちらを選ばれたのでしょうか?

(樫尾)話し合った結果、商品ブランドをつくろうとなって、実際に渡部さんにも来ていただき話し合いを行ったんです。そのときに林さんが「ドライフルーツを粉末にしてスムージーにできないか」と提案してくれたものをたたき台に商品開発することが決まりました。

(林)ただ、粉末を使うとどうしても粉っぽさが残るんです。よそで出しているいろんな粉末スムージーも取り寄せて飲んでみましたがおいしいものがほとんどなかった。どうせ作るならおいしいものがいい。最終的にペースト状にして水か豆乳、牛乳などで割って飲んでもらう生タイプになりました。

(聴き手)食感や味は大事ですもんね。フルーツのスムージーということは、何種類かあるんでしょうか?

(林)いえ。結局フルーツだけでなく、野菜なども入れた和歌山らしい1種類にしました。入っているのはおいけファームの無花果をベースに、ほうれん草と人参、椎茸、そして地元の農家さんの大豆や小豆、黒米、麹甘酒と、すべて和歌山産の素材ばかりです。

(聴き手)野菜や穀物もたっぷりなんですね。

(樫尾)そう。だからキーワードは「精進スムージー」なんです。

落合 彩矢さまインタビューイメージ 落合 彩矢さまインタビューイメージ

どんな人にどう届けたいのか、想像を巡らせて

Contents03

(聴き手)「精進スムージー」って響きもいいですね。飲んでみたくなります。

(落合)ありがとうございます。これはブランド戦略ワーク中に出てきた樫尾さんのアイデアなんです。そのワードが出た時に私たちも「それっておもしろい」ってなって、それをきっかけに方向性がけっこう変わったんですよね。スムージーが精進なのはそもそも当たり前なんですけど、高野山や熊野のイメージと結びつけて旅行体験を味わえるじゃないですか。

(樫尾)神頼みというか(笑)ご利益ありそうじゃないですか。高野山では作物があまり育たないから麓から地域の野菜を担いでいって奉納する習わしが昔からあったそうなんです。そんな話から野菜を入れて「五味五色」という言葉に行き着きました。

(聴き手)和歌山らしくていいイメージだと思います。具体的にはどういった方をターゲットに考えられたんでしょうか?

(林)それが、まさにブランド戦略ワークの中の「ペルソナ設定」でした。この「おいけスムージー」の場合、東京23区内に住む43歳の女性会社員で、趣味は自社めぐりや旅行で、自然志向な方…という風に、より具体的に考えていくんです。最終的に一言で言い表すと「仕事も夫も自分も大切にする、健康志向でアクティブな女性」となりました。

(落合)そこから導き出したブランド・アイデンティティ(ブランドのコンセプト)が「巡るカラダ。叶える私。」和歌山の原材料で、自然の恵みや自然と人のつながりを感じられ、生産者もお客様も豊かになる商品だという確固たるブランドのコンセプトを掴むことができました。

(聴き手)ペルソナやブランド・アイデンティティを作る作業はいかがでしたか?

(落合)どんなシチュエーションで使ってもらいたいか、そういう想像を深く働かせることが今までなかったので、すごく興味深かったですね。それに自分の考えだけでなく他者の意見を聞いて受け容れ合う作業は楽しかったの一言です。

(聴き手)「受け容れ合う」とは例えばどういうことでしょう。

(落合)ただ仲良しなだけでなく、意見がぶつかり合うときもあったんですが、お互いを受け容れあい、それぞれが持ち帰って振り返るという作業です。次のステップでそれぞれがそれに対して意見を言えるんですが、この工程を通してお互いの性格をより深くわかりあえた気がします。

(聴き手)飲み物のオーダーがバラバラになるくらい好みの違う人同士ですもんね。

(落合)ふふ。そうですね。そんな多様性を重視する組織なので、みんな妥協しないで言いたい放題。毎回のワークも延び延びでした(笑)

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ワークが組織の合意形成につながる

Contents04

(聴き手)ペルソナ設定以外にブランド戦略ワークでは、具体的にどんなことをされたんでしょうか?

(落合)外部環境や内部環境など、いろんな要因を分析することから始まって、ターゲットを絞り込んでいく作業なんですが、自分たちで考えると「もういいや」ってなって次に進めるところを渡部さんは1回1回最後まで考えるように根気よく進めてくれました。時間を区切って、いくつまで出してっていう風に。ファシリテーションもきっちりとしてくれていました。

(林)ブランド戦略のステップとして1回決めたことは土台からの共通事項にして、整合性を大切にしながら進めてくれていました。おかげで1歩ずつ前に進んでいった気がします。

(聴き手)メンバーの皆さんが全員で1段1段、階段を昇っていくようなイメージですね。

(落合)そう。だから結局商品のことを考えていたけれど、組織の合意形成になったと思ってるんです。このブランド戦略ワークが終わって、他の人から「おいけファームの人ってみんな同じこと言うよね」って言われたんです。みんなの意識が固まったなと、自信が持てるようになりました。

(樫尾)たしかに、ブランド戦略ワークで自分たちのそれぞれの強みがわかったので、すごく自信をもっていられるようになったと思います。自分自身も、メンバーそれぞれも。

(落合)ブレなくてよくなったのかな。それまでは「どこに向かっていくんだろう」っていう不安があって「おいけのまど」のイメージがどこかボヤッとしていたんです。みんなで話してある程度共通の認識ができて、その上でそれぞれが考えてくれて、今は意見がより言いやすくなりました。

(聴き手)ブランド戦略ワークの前後で大きな変化があったということですね。

(落合)樫尾さんが結構変わった気がする。積極的に話すようになりましたよね。

(樫尾)そうかもしれません。それまで「違う」と言ったら否定している気がして言えなかったんです。でも渡部さんのワークで、意見を言うのは人の批判をしているわけではないと教えてもらいました。自分の大切なことを守りつつ、欲しいものを引き出してくれる人だなと感じました。

(林)渡部さんは「こういうブランディングで行きましょう」と言うのではなく、それぞれの意見を聞いて、それぞれの内にあるものを引き出してくれるんですよね。決して押し付けのブランディングじゃないのが私たちにはよかったです。

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素材をじっくり味わうスムージー

Contents05

(聴き手)もう販売は始まってるんですよね。完成したスムージーはどんな仕上がりでしょうか。

(落合)野菜とフルーツの味に穀物系の風味が混ざって、やさしい、ほっこりする味になりました。無花果はゴロッと感を残すためにザク切りで煮詰めているんです。なので舌触りに甘酒や無花果があたるんですが、それをゆっくり感じてもらえる味わいに仕上がっています。甘さの感じ方も人それぞれ。人工甘味料は不使用ですが、甘酒から感じる「和の甘さ」があって、甘ったるくないのが特徴です。

(聴き手)実際に皆さんも飲まれてるんですか?

(落合)私はほぼ毎日飲んでいます。今までスムージーはミキサーを使っていちいち作っていたけれど、ミキサーを洗わなくていいし、仕事にもそのまま持っていける。昼休みにコンビニで豆乳を買ってきて、タンブラーで混ぜて飲んでいます。忙しいときにはいいですよ。結構お腹がふくれるんです。黒米なんかが入ってるからかな。

(聴き手)飲まれた方の評判はいかがですか?

(落合)正式な発売前にサンプルを送った方たちから意見をお聞きしたんです。無記名なので厳しい意見が多いと思っていたのですが、見た目に関しては「シンプルでかわいい」「おしゃれ」「高級感がある」、味に関しては「やさしい味わい」「体によさそう」「無花果のゴロッと感がよかった」などでしょうか。意外と良い感想が多くて安心しました。色がよくないと言われるんじゃないかと心配していたんですが、そこは大丈夫でした。

(聴き手)見た目はトレーシングペーパーを巻いているんですね。シンプルでキレイです。

(落合)ありがとうございます。梱包は自分たちで、デザインはメンバーの吉岡徹さんが担当しています。渡部さんにもサンプルの段階でパッケージを見ていただき、さらにブラッシュアップするためのご意見をいただきました。

(聴き手)今後の課題や改善点はありますか。

(落合)そうですね。無添加なので賞味期限が常温で3ヶ月と短いことでしょうか。でも長くするには添加物を入れないといけないので、そこは少し考えどころです。

(聴き手)現状に点数をつけるとしたら何点ぐらいですか?

(落合)満足度はまだ70点ぐらいです。賞味期限についての問題を除けば今できる範囲の中でいいものができたと思っています。でも品質の安定やコスト面でもっとできることがあると思っています。

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多様性を生かした挑戦の場に

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(聴き手)これを足がかりに、今後さらに挑戦したいことはありますか?

(樫尾)それぞれがやりたいことに挑戦できたらいいですよね。僕の場合は森の開拓、林さんは生産。それぞれの強みがあることが明確になったので、任せておいて安心だし、その分野ではその人がそういうのならやろうと素直に思えるようになったと思います。ウピの人にはウピを任せよう、とか。

(林)方向性としては、体験をもっと増やしたいですね。ただ楽しかったで終わらず、一緒に知識を得られて考えを深められるようなものができればいいなと思います。

(落合)そうですね。うちの商品は体験系がメイン。このスムージーもここで提供するときは瞑想とセットでもいいのかなと思います。

(聴き手)ここはそういった体験の拠点となっていくイメージですね。

(落合)そうですね。施設自体ももっと充実させてカフェ営業に近づけられたらいいですし。今は倉庫の延長なので、もっとキッチンを作ったり、いろんなことのできる場になれば、体験できることの幅もきっと広がると思います。

(樫尾)その上で、僕は木工、木育、森、自然を含めた体験でコンテンツの幅を広げたいです。山の中に入って森の深い部分まで学んだり、森林療法的な体験ができたりすればいいですね。

(聴き手)喧騒から離れた自然ゆたかな場所ですもんね。すごく癒やしにいい場所な気がします。

(落合)そうですね。ここを訪れる人がセルフマネジメントできるような場所になればいいですよね。今わりとメンバー自体がそういう感じかもしれません。土日ここへ来てリセットしています。
私個人はこの組織が将来的にもずっと続いていけたらと、まずはそれを考えますね。本業ではなかなか失敗しにくいじゃないですか。メンバー自体の多様性を生かして、ここでもっといろんなことを試して、本業に活かせるような挑戦をしてくれれば。そして、そこからいろんなものが生まれてくれたら何よりです。

(聴き手)個性派の皆さんの挑戦、すごくおもしろそうな予感しかないですね。今後の取り組みを楽しみにしていますね! 今日はありがとうございました。

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