自分の考えていることを明確にしてくれて、ゴールまで導いてくれる。
デザインだけでなく想いが伝わるホームページに満足しています。
国内最大級の家庭用品の産地、海南市。
キッチン、バス、ランドリー用品といった生活雑貨を中心としたさまざまなメーカーが集まるこのまちに、
知る人ぞ知る、こだわりの雨合羽ブランドがあります。
プロ仕様の雨合羽は、農業や水産業をはじめ屋外や水場で作業をする人には欠かせない、いわば現場仕事の制服のようなもの。
生地にも技術にも妥協せず、着心地と性能を追求し、手作業で作られる純国産の雨合羽は長く使える一着として多くの人から愛されています。
そんなプロ用雨合羽の老舗ブランドに、エイドデザインがブランド戦略とWEBサイトリニューアルのお手伝いをさせていただきました。
(インタビュアー)フリーライター 橋本 真美/(写真)PHOTOGRAPHER 原田 佳美
1枚1枚職人が仕上げるプロ用雨合羽
(聴き手)創業から100年以上の老舗なんですね。代々雨合羽を作っておられるんですか?
創業時はこの辺りで盛んだった棕櫚ほうきやブラシなどを作る会社でした。私で4代目なんですが、2代目の頃に紅茶などの輸入業と共に雨合羽の製造を始めたそうです。でも当時は大手のユニチカビニロンカッパのOEMだったんですよね。OEMですと工賃ぐらいしか支払われず、利益率も低いということで先代が自社ブランドを立ち上げました。それがレリーローヤル、マリンレリーといった今もメインとなるブランドです。
(聴き手)この自社ブランドの合羽、こだわりはどういったところにありますか?
すぐ隣の工場で、日本の職人が1枚1枚ていねいに作っている合羽ということです。他社さんだと流れ作業で分担して作られていると思うんですが、うちでは最初から最後まで1人で縫製するので、縫製番号というのをつけています。それだけ責任をもって縫製にあたるので不良率もかなり低く、年に数件あるかないかです。おかげで安心して販売できています。
(聴き手)それだけ徹底していいものづくりをされているということですね。何か特殊な技術が必要なんでしょうか?
そうですね。普通のミシンと違って、ウェルダーという高周波ミシンになりますので、技術が高くないと扱うのはちょっと難しいのはあると思います。
(聴き手)こちらの合羽はメディアでもよく登場しているんですよね。日本テレビの「THE 鉄腕DASH」やNHKドラマ「水族館ガール」どっちも見てました。タイの公共放送なんてのもあるんですか? 海外でも起用されてるんですね。
まれに衣装屋さんから直接購入いただいて教えてくださることもあるんですが、だいたいがいつの間にか衣装の1つとして使ってくださっていることが多いので、テレビを見ていて従業員が気づくということが多いですね。
(聴き手)実はそんな感じなんですね。なんと言っても胸元のイカリマークがかわいい。これがよく使われるポイントじゃないですかね。
他社さんのものは派手なものが多いので、それに比べると単色で色が落ち着いているのとかわいいのがあって、使いやすいんじゃないかなと思っています。
(聴き手)ちなみにこのイカリはロゴにもなっていますが、どんな意味があるんでしょうか?
荒海に漂う船をつなぎ止めるイカリには絶対の信頼と安心・安全が託されていますよね。私たちも雨合羽を通じてお客様に安心と安全をお届けることを使命としておりますので、そのシンボルとしてイカリをロゴにしています。
(聴き手)これはいつごろから使われているんですか?
1982年頃、マリンレリーという水産用の雨合羽ができたときに先代である父が作ったと聞いています。水産用ではあるんですが、実際には半分ぐらいの方が陸上で使ってくださっていて、土木建築業の方や農家さん、水族館などのアミューズメント施設の方、酒蔵や食品関係と幅広い業種でご利用いただいています。
(聴き手)プロ用ですが、業務用というだけでなく一般の方も使っている場合があるんですね。販路はどうされているんですか?
父が40年ほど前に日本全国の問屋さんを回って契約してきたので、それが今も続いています。そこから釣具屋さんや作業服屋さんなんかで販売していただいています。また最近はインターネットで購入いただくことも増えてきましたね。
名刺やメッセージに想いを込めて
(聴き手)エイドデザインとの繋がりはいつ頃から、どういったきっかけで始まったんでしょうか。
今から5年ほど前でしょうか、共通の友人を通じた食事会で渡部さんにお会いしたんです。当時はまだ渡部さんが独立される前でしたね。それを機に仕事のことで相談に乗ってもらってアドバイスをもらうようになりました。会った翌年に名刺をお願いすることになってできたのがこれです。
(聴き手)ではこの名刺はかなり長く使われているんですね。
はい、もう長く使い続けています。お客様に一言メッセージを書きたい場合があるので、その場合はメッセージを書いて付箋で貼れるようにしてもらっています。これをインターネットでご注文いただいたお客様に手書きのメッセージと一緒に送るんですが、これと、もう1枚ご紹介カードというのもあって、これも渡部さんに作ってもらいました。
(聴き手)なるほど、ここに名刺を貼ってご紹介者さんに渡してもらう形なんですね。
これは基本的に毎回皆さんにお送りしているんです。メッセージは2回目の方や常連の方には内容を変えたりと工夫しています。
(聴き手)それはなかなかご苦労ではないですか。
そうですね。でもやりたくてやっているので苦ではないですよ。前職では直接お客様に関わることがなかったので、やっぱりお客様に喜んでもらいたいし、買っていただいた方に何かお返しがしたいという気持ちが先立ちますね。
(聴き手)インターネットからの注文はリピーターさんも結構多いんでしょうか?
そうですね。ただ、うちの合羽は長く使われる方も多くて、2年とか、最長の方で10年使っていただいていたりするので、リピート注文の周期が人によって違うんです。それだけ期間が空いていても注文したときに手書きのメッセージがくれば喜んでもらえると思うんです。その気持ちの先に、紹介カードを誰かに渡したり宣伝してもらえることがあれば、次に繋がると思いませんか?
そういったことから渡部さんにいろんなツールを作っていただき、実際すごく役に経っています。
サイトリニューアルのためのブランド戦略
(聴き手)最近公式サイトのリニューアルをされたということですが、作り直すきっかけは何だったんでしょうか?
そうですね。以前のホームページは私が自作していたので、想いは詰まっていたんですけど、ぶっちゃけゴチャゴチャしていたんです。写真も私が撮っていたのでシャープでなかったりもしました。それで売れてるからいいやん、という部分もあったんですが、結局弊社のウェブサイトをキレイにすることで、お客様のECサイトなどでの営業ツールとして使ってもらえるなというのがあったので、どうにかしたいなと思うようになりました。
(聴き手)そう考えるようになってすぐ依頼されたということでしょうか?
いえ。考え始めたのは実際に依頼する1年ぐらい前ですね。その頃、渡部さんがブランドマネージャー認定協会のトレーナーとして、ブランディングのセミナーを開かれたので受講したんです。私もブランディングに興味があったので。その時には新しいホームページを自分でやらないとしたら渡部さんにお願いしようとは考えてました。渡部さんの他にはいないなと。
(聴き手)そこまでエイドデザインに惚れ込まれた理由はあったんでしょうか?
一般的なサイトはすごくきれいだったりはするんですけれど、メッセージが足りていなかったり、想いを伝えるサイトではなかったりすると感じていました。その点渡部さんは名刺のこともあって、ただきれいなだけじゃなく、きちんとそういったところを考えて作っていただける方だなと思っていたからですね。
(聴き手)なるほど。ご自身の想いがしっかりと詰まったものを作るなら、選択肢がエイドデザインだったということですね。実際にサイト制作の前段階でブランド戦略ワークを受けられたと思うのですが、どういった部分が印象に残っていらっしゃいますか?
ざっくばらんに言うと、すごく楽しかったですね。毎回渡部さんが来てくれて、マンツーマンで授業みたいに進んだあとに課題を出してくださって。それをいかに早く進めていくかという部分で、結構楽しめました。ただ自分が100%向き合ったけれども、もっと頑張れた部分があったんじゃないかなという自問自答はありますね。
(聴き手)それはどういった部分ですか?
主に分析ですね。3C分析(内部環境)とかPEST分析(外部環境)というのがあって、言うなれば他社さんを調べたり、今後世の中で起こりうるようなことを考えたりするんですが、日頃からもっと考えていればすぐに埋まるようなことも、なかなか出なかったなと。
(聴き手)これを調べるのが課題なのですね。でもこれを作ることでしっかりと考えるきっかけになりそうですね。
確かにそうですね。実際1年前に入門セミナーを受講していたので、ある程度自分の中でもこういった分析をしていたつもりだったんですけど、もっと上を目指したらよかったのかなと考えることはあります。でもこういった分析をしてアウトプットする大切さというか、自分だけで持っているのではなく渡部さんに見せることで自分なりに整理ができたと思っています。
見えてきたペルソナの方向性と自社の強み
(聴き手)ブランド戦略ワークを通して見えて来たものとは何でしょうか。
私たちにとって本当のお客様がどういう方かを考えて、決定につなげることができました。その方が雨合羽というとどんな想像をされるのかというような、いわゆる「ペルソナ設定」ですね。
(聴き手)尾﨑さんはどういったペルソナを設定されたんでしょうか?
方向性として仕事に対して勤勉な方に使ってもらいたいなというのがあったので、それを一言で言い表すと「大自然と向き合う勤勉な方」というワードになりました。
(聴き手)大自然という大きなくくりなのですね。イカリマークのイメージから、私はてっきり尾﨑産業さんのペルソナは水産関係の方だけだろうと思いこんでいたので、ちょっと意外でした。
もちろん水産関係の方には多く使っていただいているんですけど、最近はその他の職業の方にもよく使っていただいていて、いま新しい陸上モデルの合羽も作っているところなんです。
(聴き手)水産用と陸上用では作りが違うのですね。
はい。開発段階なので詳しくは言えませんが、陸上でより使いやすいよう改良しているところです。
(聴き手)ペルソナが決まると、次はどういったワークになるんでしょうか。
そこからポジショニングマップというツールで、自社と競合企業との位置関係を調べます。これで作業効率を上げる・下げるなど機能性の部分で自社がどこにいなければいけないか、他社がどこにいるのかを明確にします。これによって自社の強みがどこにあるのかというのも出てきます。
(聴き手)これをしたことによる発見は何かありましたか?
元々これを作るために「3C分析(内部環境分析)」で他社さんのことを調べたんです。発見というのとは違うかもしれませんが、わかっているようできちんと調べていなかったことを改めて知ることができました。また、ポジショニングマップで自社の強みや価値を明らかにしたことで、自分たちがどういう風にお客様に思っていただきたいのかというブランド・アイデンティティ(ブランドのコンセプト)に結びつけることができました。
人との関わりを大切に、「より、あたたかく。」
(聴き手)どういったブライド・アイデンティティが導き出されましたか?
私達のブランド・アイデンティティは「より、あたたかく。」になりました。もともと雨合羽は防寒具として使われることもあって、ただ夏場は動くこともある。なので体だけでなく「心もあたたかく」という意味も込めています。これは僕のなかでかなりしっくりきています。
(聴き手)あたたかく守られているという風なイメージでしょうか。
そうですね。手書きのメッセージや電話対応なども含め、人と人とのつながりを大切にしているので、今後はECサイトができたり、ロボットやAI化が進んだり、世の中が機械化すればするほど、私たちのようなアナログな人の心を大切にする企業が差別化になっていくんじゃないかと思っています。
(聴き手)生産に関してもあえてアナログな方法を取っておられますし、会社全体で「人」との関わりを大切にされているのですね。
たとえば電話対応ひとつでも、お客様が求めていることをあらかじめ考えて伝えるように心がけています。例えば在庫がない場合「ありません」ではなく「この色とこの色ならありますよ」という提案をするように気をつけています。
(聴き手)まさに血の通った接客。それだけで印象が変わりますよね。
大学の頃に台風の被災地にボランティアで行ったことをきっかけに、人のためになることをしたいと思うようになったんです。
(聴き手)そういった想いがSDGsの取り組みとして行っている「在庫外の雨合羽で被災地支援」にも生かされているんでしょうか?
そうですね。実際在庫外の合羽がたくさんあったというのもあるんですが、中小企業でも目線を変えれば被災地の支援もできるよというのを実践したくて。また最近は補修布を配ったりもしています。これは合羽がやぶれた時に延命できるように貼る小さなはぎれなんですが、弊社のものを使っている方以外でも全ての塩ビの合羽を使っている人にご要望があればお送りしています。
(聴き手)決して自社のアフターフォローということでもないんですね。
コロナで厳しい状況下にいらっしゃる方もいる。うちとしてできることはこれぐらいですけれど、困っている人のために何かやれることがあるならやりたいですね。本業以外のことであっても、目線を変えればできることがあるんじゃないかと常に考えています。
「防水」を武器にイノベーションを起こしたい
(聴き手)ブランド構築をされて、実際サイトはもう公開されているんですよね。これによって変わったことはありますでしょうか?
まず問屋さんなり取引先の方から、写真を使いたいという話が既に数件きています。サイトや写真を営業ツールとして使っていただいているのを実感しました。本当に有り難いですね。
私自身はデザインが統一されて見やすくなったと思っています。それに加えて、読みやすさやメッセージの伝わりやすさがきちんとしているなという部分で、エイドデザインさんにお願いしてよかったなと感じています。ホームページを作る前に、自分でも参考にいろいろなサイトを見ていたのですが、デザインはいいのに文字が多すぎて読みにくいなというものも多かった。その点読みやすい量にトータルできっちりサポートいただけているのが素晴らしい。
https://ozakisangyo.com/
(聴き手)実際にそれを感じるエピソードなどはありましたか?
たとえば私の代表メッセージですが、最初に下書きを書いたら「もっと多くてもいいですよ」と言ってくださって。先ほど文字が多すぎるのは読みにくいと言いましたが、少なくても伝わらない。渡部さんにはただ文字量を抑えるのではなく、より伝わりやすい言葉に変えていただいたり、行間のとり方などを工夫することで、読みやすいページにしていただけました。
(聴き手)今後どういった展開を描いていらっしゃるのかお聞かせください。
最近は北海道や長野など遠方からもこんな合羽ありますかという問い合わせや合羽以外の商品の相談も来るようになりました。雨合羽だけでなく、その技術を応用して「防水」という大きなくくりでイノベーションを起こしていきたいと考えています。そのためにも、どんな要望を受けたときでも受けられる技術力を高めていきたいです。
またデザイナーさんとコラボしたカッパも作ったこともあったんですが、今後またそういったかっこいいおしゃれなカッパにもチャレンジしていきたいですね。
(聴き手)その中で、今後のエイドデザインに期待することはあるでしょうか?
サイトができて、今はある程度満足した状態になっています。今後、このブランド・アイデンティティを社内で浸透させるのは代表の僕の役目。さらに社外に伝えていくためには渡部さんの助けが必要だと思っています。そのためのやり方や方法があれば、また導いてもらえると嬉しいですね。今後もなにか困ったことがあればまず渡部さんに相談したいと思っています。
(聴き手)尾﨑さんから見た渡部さんとはどういう人でしょうか?
自分の考えていることを明確にして、それをゴールまで導いてくれる方。ブランディングにしても、自分で試してみてその経験を生かしているというのがあるので、一般的なコンサル業の方ではなく実践を踏まれた分きちんとゴールを考えてくださる。
人柄でいうと、正直者を応援している誠実な方。その誠実さはブレないでほしいなと思いますが、言われなくてもブレないだろうと思います。(笑)
今後、誰かに紹介する際には、やっぱり相手も誠実な方にご紹介したいですね。
(聴き手)自社だけでなく、多方面に目を向けた製品づくりや活動に感服しました。今後の新たな展開にも期待しています。今日はありがとうございました。
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