応援されるブランド【第8弾】La Paix(ラペ)
東京・日本橋から、フランス料理で日本らしさを世界に発信するミシュラン一つ星のフレンチレストラン“ラペ(La Paix)”。
La Paixとはフランス語で「平和」という意味。心をこめたサービスで、フレンチの楽しさを伝え、穏やかな心をもって、人と人との温かなつながりを大切にされているオーナーシェフの松本一平氏。
同氏は、桃農家の課題を解決するコース料理の考案、水産資源の持続性を改善する活動、またコロナ禍では生産者を巻き込んだ配送コースの販売、新店舗を起ち上げる際にクラウドファンディングを活用するなど、常に新しいチャレンジとステークホルダーとのつながりを大切にする経営姿勢で、応援されるブランドを牽引してきました。
日本・調和・心・繋がり・五感という5つのフィロソフィーをベースに、心のこもった温かい料理とサービスでゲストをもてなす“ラペ”は、どのようなブランド戦略を描き、どのようにして成長してきたのか。
松本シェフの修行時代から“ラペ”の創業とこれまで歩み、そしてこれからのビジョンについて伺いました。
<La Paixインタビュー記事・コンテンツ>
1. 真綿のように吸収した学生時代
2.サービスから始まったヴァンサンでの修行
3.ベルギーの一つ星レストランでの気付き
4.シェフと役員の二足のわらじ
5. 辞めてから○週間でラペをオープン
6.ベルギー人の問いから生まれたコンセプト
7.生産者のお困りごとを料理の力で解決する ←一番の読みどころ!
8.世界を相手にする料理人に求められること
9.コロナ禍での新たな挑戦
10.受け容れることがチャンスにつながる
1. 真綿のように吸収した学生時代
AID:お母様がおでん割烹店をされていたそうですが、その姿を見て料理の道を目指されたのですか?
松本氏:そうですね。母は食べるのが好きで、その延長線上でおでん屋さんをやっているという感じでした。
ちなみにこのお店の名前が“平ちゃん”です。
おそらく、私の名前が“一平”で弟が“陽平”なので、そんな店名を付けたのだと思います。
AID:ご両親とも食べるのが好きだったのですか?
松本氏:いえ、主に母親の方ですね。父はタイル職人をやっていて、無口で黙々とやる職人気質だったので、そんなに外に出るようなタイプではありませんでした。
一方、母は積極的なタイプで、色んな所に食べに連れていってくれました。
私が中学校に進学した頃くらいでしょうか。
当時、和歌山にあった“アンシェーヌ”というフレンチレストランに連れて行ってもらった経験も、料理の道を目指した一つのきっかけになっています。
AID:高校を卒業してから料理の道に進まれたのですか?
松本氏:はい。高校3年生の時、「料理の道に進みたい」と先生に相談したら、働きながら料理を学ぶ学校が奈良県にあるということを教えていただき、そこを紹介してもらったんです。それが奈良調理短期大学校でした。
その学校では50店舗くらいのレストランと提携していて、昼間は学校で学び、夜は提携しているお店で働くんです。
学校は週に3日間休みがありますが、その休みの日も提携してるレストランで働きます。
私が働き先に選んだのは、奈良県の大和郡山市にあるフレンチレストラン“Le Benkei(ル・ベンケイ)”というお店でした。そこは寮もあったので、住み込みで働きながら学校に通っていました。
AID:ル・ベンケイさんの寮ですか?
松本氏:そうです。お給料を貰い、そこから学費を捻出していました。技術が身につき、お金も貰え、学校にも行けるという一石三鳥のような環境でしたね。
AID:学校が休みの日も仕事であれば、完全な休日は少なそうですね。
松本氏:昼間は学校で夜はお店で仕事、学校が休みの日も仕事です。火曜日がお店の定休日でしたが、学校はあるのでその日の夜だけが完全な休みでした。
AID:夏休みや冬休みも仕事をされていたのですか?
松本氏:はい。ただ、お店にも休業日があるので、年に4日とか5日くらいは休めていたと思います。
その頃は自分がやりたいことをやっているだけなので、特に苦とも思わず2年間やってました。私自身がそういう経験をしたからかもしれませんが、勉強するには若い内に吸収しておいた方が良いと思っています。
AID:当時からフレンチ一筋だったのですか?
松本氏:いえ。実は和食でいくか、フレンチでいくかで迷っていた時期がありました。
というのも、働いていた“ル・ベンケイ”はその当時、“洋風懐石・弁慶”という名前で、お箸で食べるフランス料理というコンセプトでやっていたのです。
そのため、もう少し正当派なフレンチをやりたいと思いつつ、どちらの方向に進むか悩んでいました。
その頃、たまたま休日に和歌山へ帰ったとき、母が先程の“アンシェーヌ”に連れていってくれたんです。
何かのヒントにつながればと、気に掛けてくれていたのでしょうね。
そこで、ゆくゆく自分が働くことになる東京六本木にあるフレンチレストラン“ヴァンサン”の城シェフがイベントで来られていたんです。
母は“アンシェーヌ”の常連だったこともあり、「今度のイベントの時に手伝わせてもらったら?」みたいな感じで城シェフにつないでくれ、“アンシェーヌ”での研修が決まりました。
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