値決めはブランディングの第一歩
こんにちは。
夢を目標に変えるブランディングパートナー、エイドデザインの渡部(わたなべ)です。
さて、本日は値決めのお話です。
競合他社との差別化や差異化に成功すると、ブランドはその価値を高めることができます。
そして、その価値を継続して保ち続けることにより、多額のマーケティングコストをかけることなく安定的に顧客から指名買いをしてもらえるようになります。
指名買いをしてもらえるようになれば、企業はより積極的な価格設定を行うことができます。
それがブランドの特権ともいえるプレミアム価格です。
このように競合他社との価格競争と一線を画した上で【価格の決定権】を得るということは、多くの企業にとって欠かすことのできない重要なポイントではないでしょうか?
と言っても、価格の決定権はそう簡単に得られるものではありません。
価格の決定権とは、ニーズを徹底的に追求し、商品・サービスの付加価値を向上し続けることで最終的にユーザーからの信頼を勝ち取った結果であり、ブランディングの証しでもあるからです。
だからこそ、ブランドやブランディングについて学ぶ際、多くの経営者やブランドマネージャーは価格の決定権を得ることに重きを置いているのです。
1. 価格の決定権がないってどういうこと?
企業は、製造にかかった原料・材料費、開発費、製造費、人件費、販売促進費などを考慮して、かかったコストに対して確実に利益が出るように、商品やサービスの価格を設定します。
そのため価格は当然、「常に自分たちで決めている」と考えているはずです。
ところが、実はそうではないことも多いのです。
「この手の商品なら、だいたいこのぐらいの価格帯で販売されているので、この商品もこのくらいの値段がよいだろう」
「この価格だと、他の商品に比べて高すぎて売れないのではないか」
などといったように、実際は相場観や競合商品・サービスとの兼ね合いを見ながら価格を決めているのです。
そればかりか「他社より安くすれば売れるだろう」というように、競合が出してきた金額より下げること、いわゆる競合の下をくぐるような決め方をしている業界も少なくありません。
このような決め方は、まさに「価格決定権がない状態」の典型。
もちろん、戦略上、競合より価格を下げることが必要なこともあるでしょう。
しかし、それはあくまで自社が立てた戦略に基づいている場合の話です。
全体的な販売管理費は変わらないのに、競合の動向だけを見て価格を下げてしまうようなことをすると、利益率が下がるだけでなく、ブランドの価値を大きく毀損することにもつながります。
消費者の心理としても、「他社商品と比較してこちらの商品の方が安いから買おう」という単純な気持ちになるだけで、そこにブランドとしての魅力や価値を感じて購入しているわけではないのです。
2. ブランドが目指すべきは「プレミアム価格」
これとは反対に、価格の決定権が得られる状態、つまり「プレミアム価格」での販売が可能になったらどうでしょうか?
ブランドとして目指したい一つの姿ですよね。
では、ミネラルウォーターの購入を例に考えてみましょう。
最近では、スーパーやコンビニ、ホームセンターなどあらゆる場所で様々な種類のミネラルウォーターが販売されています。
ラベルのデザインやサイズ、細かな含有成分の違いこそありますが、よほどの舌の持ち主でない限り、すべて区別できるほど水の味が細かく分かる人はいない、というのが正直なところです。
例えば、エビアン。この商品は500ml入りで130円程度で販売されています。
おそらく、これを「高い」と感じる人はあまりいないでしょう。
しかし、見たことのないミネラルウォーターに対して、エビアンを同じ金額を払おうと思うでしょうか?
比較対象として適切ではないかもしれませんが、水道水は同じ500mlでおよそ0.1円です。
ミネラル分の違いはさておき、「水分を摂取する」という機能的価値だけであれば両者になんら変わりはありません。
ところが、エビアンは水道水の1300倍の価格でも売れるのです。まして「水は必ずエビアンを飲む」と決めて、それしか買わない人すら存在します。
この差、つまり目には見えていない部分にこそ1300倍の価値が潜んでいるのです。
ブランドが目指すべきは、まさにこの差を創り「プレミアム価格」を成功させることなのです。
3. プレミアム価格はぼったくり?
プレミアム価格のことを「デザインやパッケージを変えて高く売ること」だと考える人も少なくありません。
実はこれ、ブランディングでよく勘違いされがちな残念な部分でもあります。
しかし、ジャケ買いで一度は購入されることがあったとしても、中身が伴わなければ二度目以降(リピート)につながることはありません。
見た目だけではなく、商品の中身に価値を見出さないと、また買おうという気持ちにはならないのが消費者です。
プレミアム価格とは、ただ高く売るためのぼったくりでも、企業が私服を肥やすために存在しているものではありません。
永く愛されているブランドほど、販売によって得られた利益を、品質を担保するためのコストやブランドが持つ価値を伝えるデリバリーコスト、ロイヤリティーの高い顧客へのフォローアップなどに使用しています。
またブランドを取り巻く環境をより良くしたり、社会へもしっかりと還元されるような活動にも活用したりしています。
ブランディングが成功することによって、自社や顧客・消費者だけでなく、ステークスホルダーや社会全体が「オールハピネス」に導かれる。これこそが、ブランドの醍醐味なのです。
逆説的にいうと、そのような使い方のできない会社はブランドを中長期的に維持していくとはできません。
「値決めは経営」という有名な言葉が示すように、価格は売り上げだけでなく、その会社の理念や戦略、商品価値などあらゆるものに関わります。
そう考えると、「値決めこそブランディングの第一歩」といえるのではないでしょうか。
今日も最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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<参照>田中洋監修、一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会著 『ブランド・マネージャー資格試験公式テキスト』、中央経済社、2019年
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