最初で最後、外注したいと思えた唯一の人。
チャレンジをしようとなった時、完全に人で選ばせていただきました。
スポーツ選手から経営者にいたるまで
幅広いジャンルの人の目標達成をメンタルの部分から指導する。
そんなプロコーチであり講師、
メンタルトレーナーとして活躍する新進気鋭の研修講師。
クライアントには日本、世界で活躍するアスリートや名だたる企業の経営陣も。
日々忙しく西へ東へ。
自身も経験したからこそ伝えられる川阪さん流の目標達成のアプローチは、
聞く人の心を動かし、着実に実績へと導いています。
(インタビュアー)フリーライター 橋本 真美/(写真)PHOTOGRAPHER 原田 佳美
競技者から指導者へ。きっかけは過去の自分。
(聴き手)ポロシャツを着られているからかもしれないんですけど、一見するとテニスやゴルフの選手のようにも見えますね。
よく言われます(笑)。今日もこの後このままの格好で研修に行くんですけど、資料配ってるとスタッフと間違えられる時もあります。
(聴き手)それはそれでネタになりそう(笑)。実際にスポーツをされていたんですよね?
そうです。中学3年間・高校3年間・大学4年間と計10年間陸上競技をやってきました。
(聴き手)その経験がどう今につながっているのか気になるところです。
根本なのですが、コーチ、講師というとどういった方に向けたものなんでしょうか?
対象は企業、学校、スポーツ。一見畑違いに思うかもしれないんですが、僕がお手伝いさせていただくのは目に見えにくいメンタル、心、感情、気持ちの部分であったり、または目標設定や夢の実現といったパフォーマンスの部分。これって、どれも企業、学校、スポーツのどれにも当てはまるんですね。
(聴き手)なるほど。言われてみれば。そこでスポーツが関わってくるわけですね。
そうです。僕がやってきたのは陸上ですが、競技なので勝った負けたの世界ですよね。
当時、僕は中学で近畿大会2番、高校でも近畿大会2番、才能やセンスが重視される競技の世界で踏ん張って、大学で始めて関西で優勝して、日本で5番まで入ったんです。
(聴き手)関西優勝、日本5位。それはすごい!
うまくいかない経験もしたりしましたけど、そんな風に目標達成できるようになったのは、僕自身が学校の先生によって変わったから。自分も子どもたちが夢を叶え、人生を変えられるような、そんな先生になりたいと思うようになりました。
でも、そこから紆余曲折があって、最終的には「陸上を教えたい」にこだわりや執着があるわけでないことに気づいたんです。それよりも、どの分野でも過去の自分のように頑張っている人を応援できたらなって。そこから対象が変わりました。ゆえに、学校だけにもこだわらないし、企業だけにもこだわっていません。
(聴き手)そう考えるようになったきっかけって何かあったんでしょうか?
そうですね、しいて言うなら過去の自分がきっかけですね。こだわったのは「真面目、本気、一生懸命」。僕は1人の先生との出会いによってうまくいかなかった自分がうまくいかせてもらった。プロだとか、日本一、世界一というのではなく、真面目、本気、一生懸命、そういう人を助けられたらという部分にこだわったら、ジャンルを絞る必要がなかったんです。
カメ流の戦い方・勝ち方とは
(聴き手)川阪さんご自身も悩まれた時期があるということでしょうか。
ありますね。中学の頃って言ったら一般的にも、生死を決めるようなことではないささいなことで悩むもの。やはり陸上のことなんですが、思春期の男の子にとって、他の学校の子に負けるよりも、友達に負けるのが悔しいんですね。仲のよかった友達に負けたり、または2年になって後輩ができた時に、後輩に負けるっていうのはすごいダメージを受けるんです。
(聴き手)なるほど。そうかもしれません。
そんな時に1人の先生に出会ったんです。幼稚園や小学校で夢を持ちますよね。でも夢を持ち続けるのが難しくてやめていくんです、多くの人は。そういう思春期に「頑張ったら報われる」という原体験をさせてもらったのは財産だと思っています。
(聴き手)先ほどもおっしゃっていた「先生」ですね。
はい。そうなんです。中学の陸上で指導してくださっていた原田隆史という先生なんですが「なんや、夢とか目標とかって持って生まれたもんか。才能やセンスの世界か」って諦めそうになった時に、「いや、違う。やり方や方法、努力の仕方があるんだ」と教わって、実際にそれでうまくいったんです。
(聴き手)その鍵がメンタルにあったということでしょうか?
メンタルが一番大きいんですが、未来の描き方というか、それを達成する行動計画の立て方、あとは自己分析ですね。自分がどこを伸ばしたいかであったり、どうやったら自分が勝てるのか、映えるのか。企業であればどうやったら選ばれるのか。そういった努力の仕方を教えていただきました。
(聴き手)自分の武器を知って長所を伸ばすことができたら向き不向きに関係なくある程度の目標を達成できるということですか?
はい、コーチングの原則はその通りです。ウサギとカメって童話でカメが勝つじゃないですか。でも、次やったら勝てるとは限りませんよね。ウサギは天才で才能がありますし。
(聴き手)たしかに。休まなければそうでしょうね。
コーチング的な考え方としては、仮に第2レースがあった時にカメが絶対勝てるシーンがあるとしたら、水中戦なんです。カメが真面目さやコツコツ型なら、徒競走にこだわることはないんです。カメが一番映えるところで勝負すればいい。
(聴き手)ほんとですね! 目からウロコです!
企業ではそれを適材適所と言います。人事や総務の方が社員を本来強みの発揮できる部署に配置すればいいんですが、大体は駒のように、配置することもありますよね。人材育成と考えた時に、その人が一番いきいきできる部分だったり、目に見えにくい部分まで大事にしながら、目に見える成果や長所を伸ばせるような導き方をするといいです。
(聴き手)ということは、企業では人事担当の方や役員に向けてのアドバイスをされてるということでしょうか。
はい、それもありますし、新入社員研修や管理者研修は多いですね。やりとりをするのは人事や社長さんですが、現場に入ってその人たちに直接伝えています。
10社の内定をお断りしたわけ
(聴き手)大学卒業から、今のお仕事にはどう至ったんでしょうか。
途中はなくて、社会人1年目からフリーで今の仕事を始めました。ほんとに、今思うと親孝行の逆ですよね。大学を出させてもらって、けっこういい会社からも内定をいただいたし、いろんな教育機関からもお声をかけていただいて、10個ぐらい選択肢をいただいた中で、この道で勝負したいと自分で決めたのがフリーというリスキーな道でしたから。
(聴き手)そうだったんですね。親御さんはその選択についてなんと?
特に何も言われてはないんですよね。3人弟妹の長男なんで、何も言わない家ゆえに心配かけてないのかなぁと考えますよね。
(聴き手)3弟妹の長男。それは思い切った選択ですね。内定もらったうちのどこかに一旦行ってみようなんて迷ったりもしなかったんですか?
それは迷いましたよ。なので、大学4回生の時にそのうちの2社に頭を下げて、「すみません、行かないんですけど、どうしても経験したいのでアルバイトさせてください」って頼みこんだんです。飲食とアパレルだったんですけど、スポーツの指導も当時始まっていたことから両方を兼ねることが難しかったので、僕は飲食の方を選んで、アパレルの方は彼女に行ってもらいました。「代わりに行って内情教えて」って。
(聴き手)えーー! それはなかなかユニークな発想! 彼女さん、よく行ってくれましたね。
ほんとに無茶な要望も聞いてくれて。その彼女が今の妻なんですが。そんな風に片方は間接的にですけど2社経験させてもらって、すごくご恩を感じています。やめることを前提にいろんなことを教えてくれて、単なるアルバイトなのに社員ミーティングに参加させてもらったり、おすすめの本を教えてもらったり。
(聴き手)すごく懐の深い会社ですね。
実は学生時代にその彼女をコーチングして、日本一に導いたんです。もともと中学高校と全国大会にも行ったことがなかったところからのスタートでした。
コーチングや教育の世界って身近な人が一番やりにくいって言われているんですね。他人はできても家族や恋人には難しいと言われる中で、一番身近な彼女を日本一のアスリートにしたということを認められて、学生の頃から既に講師という仕事はさせてもらってました。アルバイトをさせていただいたところでも、そういったことを評価していただきました。
(聴き手)なるほど。当時既に実績を積まれた上での起業だったわけですね。
「若さ」という壁を乗り越えて
フリーになった翌年に、大人の教育(企業への教育)までしていた恩師の原田隆史が大阪で会社を起こしたので、そこで社員というような形で2年目から4年目は自分のスポーツの指導と別に、原田先生の元でより企業向けの仕事をさせていただきました。大きい企業も多くて、いわばイロハを学ばせてもらったような感じですね。
(聴き手)そうなると相手は年上の方ばかりですよね?
ほぼ100%でしたね。
(聴き手)そこで行き当たった悩みや課題ってありましたか?
深刻には悩んでないですが、原田隆史は教育現場での陸上指導で培った「原田メソッド」と言われる人材育成の教育手法で有名な方。歴々の社長さんから「原田先生」と呼ばれて、原田先生が話すと唸るし、原田先生が立つと、こう(前のめりに)聞くんですよ。それで、後半僕が話そうとすると、やっぱり年齢で見られたりして、みんなこう(ふんぞり返り)なっていくんです。
(聴き手)わかりやすいですね。
そこに対して最初は強い「思い」で臨んでいたんですね。こういう思いでやってるんですよ、って。でも周りから言われるんです。「原田先生は大阪弁でいいけれど、川阪くんは正しい日本語でいかないといけないよ」とか、思い以外のマナーや技術といった部分でレクチャーを受けまして。それはそれで有り難かったんですけど、自分の長所が消えるような感じがしたんです。言葉を選んだり、気にしながら喋らないといけなくなって。その時は自分の中で、ああ、この1年あんまり成長していないな、と感じましたね。
(聴き手)それはどういう風に打開されたんですか?
参考にはするけれど、まるまる鵜呑みにはせず、自分が対象者から評価されているところを伸ばすようにしました。
僕もともと年齢より若く見られがちで、大学生と思われることもあるんです。この間は外国の方に18歳って言われましたし。正直、先生と呼ばれる仕事柄、マイナスからのスタートですよね。やっぱり貫禄も必要かと思って最初は年齢が高く見える髪型にしたり、服装もちゃんとしたりしたんですけど、どうやらそこじゃないぞと思うようになって。一度通ったんですけど、本質じゃなかったのでやめました。
(聴き手)そうするうちに聞く方の姿勢もこう(前のめりに)なっていったんですか?
こう(ふんぞり)からこう(まっすぐ)なってこう(やや前のめり)なって、こう(前のめり)になっていくんですけど、大人って面白いのが、すぐには変わらないんですよね。徐々に変わっていくんです。でもその感覚ってわかるんですよね。周りの目を気にして、ほんとにちょっとずつ。
(聴き手)大人はみんなシャイですね(笑)。
その話をフューチャーしていただいた内容がこちらの「魔法のリーフレット」に載っています。これは渡部さんに作っていただいたものなんですが、まさに現場ではこんな感じなんです。
ストーリーも渡部さんと漫画家さんとで打ち合わせしていただいて、作っていただきました。当時この魔法のリーフレットを渡部さんがおすすめされていて、知り合いを紹介したりしていたんですが、その中で自分も作ってもらうことになったんです。口で説明するよりわかってもらいやすくていいですね。
(聴き手)たしかに。絵になるとわかりやすいですね。
「外注したいと思えた唯一の人でした」
(聴き手)集客ってどうされてるんですか?
12年この仕事をしているんですけど、いまだにホームページもないんですし、一時期ブログ書こうかとしたけれどほぼ更新しなくて、SNSもほぼしていない。しかも営業もしないまま、ありがたいことに12年間回ってるんです。つまり、基本的に外注というのをしたことがないんです。広告を打ったり、ホームページを作ってもらうとか。
(聴き手)先ほどのリーフレットは外注ではないんでしょうか。
そう、この12年間で唯一外注したのが渡部さんだったんです。これから先に事業を広げるために広告を打つこともあるかもしれませんが、今のところそんな風に仕事を進めている中で、最初で最後というか、唯一ですね。
(聴き手)そう聞くとすごいことですね。他にはどういったものがありますか?
この名刺しかり、リーフレットしかり。また今年、中学生の全国陸上競技大会が地元開催だったので応援のために協賛金を出したんですが、その時に原田先生が経営する原田教育研究所の協賛広告も渡部さんに作ってもらいました。
(聴き手)唯一の外注に踏み切った理由は何だったんでしょうか。
今の自分自身のステージや目標の中でのチャレンジです。ホームページを持たないことや広告をかけないことにこだわっているんではなくて、それで回っていたところに、1つチャレンジをしようとなった時に、誰に頼むかっていう部分で、渡部さんにとなりました。完全に人で選ばせていただいた形です。
渡部さんとは懇意にしていた人のセミナーで出会って意気投合したんですが、本当に見てわかるように誠実で真摯な人。僕の恩師がよく言うのが「人格の上に能力を発揮しなさい」という言葉。いい人だけで終わるんじゃなく、できる人で終わるのでもなく、いい人ができる人だったら、その人も組織もよかったりするんですけど、渡部さんはまさにいい人でできる人。想いにも共感して、意気投合したわけです。
なので、何をお願いしたいとかはなく、渡部さんに何かお願いしたいなとなって、まずは絶対に使う名刺からお願いしました。
(聴き手)あれ? それまで名刺はどうされてたんですか?
自分で作ってました。逆にそれで大きい企業にも行ってたんです。
(聴き手)なるほど。実際に作ってもらうと何か変わりましたか?
渡す自分がまず変わりますよね。自分のテンションやメンタリティが違う。セルフイメージというか、仕事柄メンタリティにこだわるので、自分自身が一番胸張って渡せるよう「シンプルなものを」という方向性は共有させてもらいましたけど、配置やバランスはお任せでした。あとは紙は一番上等なものをとお願いしたぐらいでしょうか。
(聴き手)確かにシンプルさと質感がいいですね。
できた時は自分自身のシンプルなイメージを形にしてもらった喜びがありましたね。渡すときに実際に狙っていた印象を相手から声としてもらうたび、さすがだなぁと感じています。
まじめ、本気、一生懸命な人が報われるように
(聴き手)実際の講義の組み立てってどういう風にしていらっしゃるんでしょうか?
否定するわけではないんですが、基本的にコーチや講師、コンサルタントと言われる方はだいたい自分が話したいことを伝えるんです。でも、対象者が学びたいことと、こちらが教えたいことがイコールとは限らない。
対象者との関係性が希薄な時は、対象者を中心にしてあげた方がスムーズに入っていけるんです。ようするに、相手が聞きたいことを中心に前半は話して、相手といい関係になってから、本当に伝えたいことを伝える。
(聴き手)相手が聞きたいことというのは、事前にヒアリングされるんですか?
そうですね。ヒアリングやアンケートです。ですが、あまり長々とすると先方のお時間などもあるので、コンパクトな中で、こういう5つの質問をすると先方の頭の中が整理されるというのがあるんです。狙いやキーワードや、チーム・組織がどうありたいのかをシンプルにしないと運用できないので、その5つの質問を元にアンケート・ヒアリングをして講義を組み、現場に合わせてお話をさせていただくという形です。
ゆえに、伝えたいことは同じでも、対象者ごとにパッケージングしています。
(聴き手)なるほど。同じ講義はないということですね。
対象者の年齢や性別やもしくはステータスでも違ってきますからね。日本一を目指すチームと、阿倍野区一番を目指すチームに同じ内容やってたらそれは教え手が悪いということです。
(聴き手)川阪さんが一番モチベーションになることはなんですか?
なんでしょうね。
結果や成果の世界で生きてきたので、受講生やクライアントが成果を出すとか、変わるとか、そのあたりの爆発的な結果は嬉しいですね。
(聴き手)今後どこを目指していきたいというのはあるんでしょうか?
100発100中、目の前にいるまじめな人、本気な人、一生懸命な人を助けられて、その人が報われるコーチ・講師になりたいですね。
かつては自分が日本一になりたかった。彼女を教えている中で彼女が日本一になって、100パーセント嬉しいんですけれども、自分が選手としてなりたかったなという思いもあるんです。
でも、教える立場の方がたまたま自分の長所、強みとして合っていることがわかったら、自分が日本一、世界一になるよりも、誰かを日本一、世界一にする方が早いこともわかりました。なので、自分が日本一になるということに執着はなくて、他の人を日本一や世界一にすることや、まじめ・本気・一生懸命な方の努力や取り組みが報われることにエネルギーを割いている感じですね。そこにやりがいを感じますし、無限に仕事できます。
(聴き手)なんと力強い。教わる人にとっては最強のサポーターですね!
その中で、渡部さんも僕も共に成長し、共にその業界や役割の中で秀でて、その中でまたタッグを組んだり、切磋琢磨したり、もっと上の上の広いステージで世の中のため人のため、もちろん自分や家族のためも含めて、共に頑張っていきたいですね。
(聴き手)お2人の活躍が私も楽しみになりました。今日はありがとうございました!
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