ブランドは差別化より「差異化」を目指せ!
いつもありがとうございます。
ブランディングの力で経営課題を解決する社外ブランド・マネージャー、
エイドデザインの渡部(わたなべ)です。
今日はブランディングの本質ともいえる“差別化”についてのお話です。
ブランディングをすることにより、消費者・顧客に「ニーズに対する固有の連想」と「購入する意味」を与えることができれば、競合他社との差別化を図ることができます。
差別化に成功すればブランドが他社の商品・サービスから識別され、指名買いが起きマーケティング効率を高めることができるのです。
1. 差別化が生み出すメリット
「1:5の法則」という有名なマーケティング用語があります。一度は耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
これは「新規顧客に販売するコストは既存顧客に販売するコストの5倍かかる」というマーケティングの法則です。
新規顧客は、過去に商品を購入したことがある人とは異なり、そのブランドや商品・サービスを目にしたことがありません。
そこで、まずブランド名や商品やサービスの概要などに興味を持ってもらい、認識してもらう必要があります。
これだけでも様々な媒体を通じて広告・宣伝活動を行わなくてはならず、多額のコストがかかります。
さらに、いざ認識してもらえたとしても実際に商品・サービスの購入に至るとは限らないため、新規顧客は獲得までに多くの手間や費用がかかってしまうのです。
一方、既存顧客は過去に一度その商品やサービスを購入したことがあることから、認識してもらうための宣伝活動を行う必要はありません。
消耗品であれば定期的な購入も期待できる上、ブランドのコンセプトに強く共感してもらえていれば、過去に購入した物とは別のアイテム等のシリーズ買いも期待できます。
また一度接点を持っていることから、DMやSNSなどを用いて個別に各顧客の要望やライフスタイルに寄り沿った形で商品の紹介を行うことも可能です。
実際、ある飲食コンサルタントが新規客を獲得するコストと既存客を再来店するコストを計測したところ、およそ48倍もの差があったそうです。
さらに、既存顧客はその商品・サービスに価値を感じると新規顧客を「紹介」という形で連れてきてくれることも期待できます。
つまり、ブランドの差別化によりリピーターを軸としたマーケティング戦略を立てることによって、結果的に高い利益率を確保することができるのです。
2. でも、目指すべきは「差異化」なんです
しかし、ここで一つ注意しなければならないことがあります。
それは、「良いものは必ず真似をされる」という事実。
言うなれば、差別化ができた瞬間にすでにコモディティ化(同質化)が始まっているのです。
差別化の定義は「複数のものを比較して優劣をつけること」。
たとえば、3C分析やSWOT分析などを行い、ブランドに他社にはない自社独自の価値を見出だしたとしても、それが定量的に比較できるものであれば差別化でしかありません。
差別化によって先ほど述べたように結果的に高い利益率を確保することができたとしても、それだけではいずれ他社に真似をされてしまうのです。
そして終わりのない戦いが始まり、消耗戦で疲弊するという結末を迎えてしまいます。
そうならないために、ブランドが目指すべきもの。
それこそが「差異化」です。
差異化の定義は「全く性質の異なるものとして区別すること」。
つまり、企業は同質化されない、あるいは同質化できない自社独自の価値を見つける必要があるということです。
ここで、アメリカの「ザッポス」という企業の例を挙げましょう。
ザッポスはシューズの販売サイトを運営している企業ですが、他に例のないカスタマーサポートで他社との差異化に成功したといわれています。
今日はその特徴を一部ご紹介します。
◇24時間365日対応
◇可能な限り翌日配送
◇送料・返品は無料
◇購入から365日以内であれば何度でも返品
◇在庫にない靴に関して問い合わせがあった場合には、少なくとも他社サイトを3社調べ、その情報を顧客に伝える
他社の商品情報を顧客に伝えるなど、短期的に見れば売り上げにつながらないようなことでも、一つひとつの問い合わせに時間をかけて丁寧に取り組むことで、結果的に顧客を喜ばせることができます。
サービス内容を一部見るだけでも、この点を徹底していることが伺い知ることができます。
ザッポスはお客様と電話越しに接点を持てることを「この上ないブランディングの機会」と捉え、結果的に多額の費用をかけることなく口コミで売り上げを増やしていくことができたのです。
では、このようなことを競合する他社は一朝一夕に真似することができるでしょうか?
「顧客満足」を第一に考え、さらにそのサービスを徹底して提供できるように社員教育も行っていくことを考えると、なかなか難しいと思います。
容易に同質化できないザッポス独自の価値こそが、差異化が成功した例といえるでしょう。
3.「差異化」へのシフトチェンジを
差別化のみに注力していては、企業は必ず同質化競争に巻き込まれてしまいます。
「同じような品質だったら、できるだけお得に手に入れたい」と思うのが消費者の自然の心理。
商品やサービスが同質化すれば、顧客・消費者から選ばれるのは当然価格の安いものになるからです。
しかし、それでは市場が疲弊してしまい、プレイヤーが不在となり、結果的に消費者の利益にもつながりません。
ブランディングは、企業の売り上げを伸ばすことだけを目的としているのではありません。
自社、顧客、ステークホルダーなど周辺を取り巻く社会の「オールハピネス」を目指す施策です。
とりわけ、リソースの限られている中小企業は、差別化だけでなく「差異化」への早急なシフトチェンジが求められているのではないでしょうか。
差異化できる戦略をご要望の方はこちらのページも合わせてご覧ください。
今日も最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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<参照>田中洋監修、一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会著 『ブランド・マネージャー資格試験公式テキスト』、中央経済社、2019年
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